医学生と、本棚

医者4年目(後期研修医(専攻医))がゆるく書いてるブログ。(ゆったり更新中)

こんな夜更けにバナナかよ 感想 【筋ジストロフィー・鹿野靖明とボランティアたち レビュー】

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誰にでも、探られたくない過去はある。

ましてや公表されたくない過去はもっとあるだろう。

 

しかし、最後にそのことにどうしても触れざるをえないと私が思うのは、そこに人間対人間の、本質的な問題が横たわっていると思えるからだ。

 

介助とは何なのか。

人が人を支えるとは何なのか。

 


大泉洋『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話 』予告編

 

 

この本は、来月、大泉洋さん主演で映画化される

“こんな夜更けにバナナかよ“の原作です。

 

当時フリーライターであった渡辺一史さんが

2年にわたって取材を行い、

 

生命力に満ち溢れ、自己主張のとっても強い、

それなのに、どこか弱さもあって、

寅さんみたいに惚れやすいところもある、

 

“鹿野さん”の生きた記録、

 

そして、それを通して考えつづけた“介助”とは何かについて、

詳しくいろんな視点から、綴られています。

  

筋ジストロフィー(簡単に書くと、筋肉が徐々に溶け、歩けなくなり、最後は呼吸もできなくなってしまう、難病)を背負いながら

 

最後まで走りぬいた、“鹿野さん”と

“鹿野さん”を支えたボランティア、家族、恋人そして友人との

生々しい、リアルな人間模様(衝突、葛藤、恋愛模様まで。)

を覗き見ることができます。

 

 

この本は、いろんな意味で私の常識を覆しました

 

私は、今まで人工呼吸器をつけている方で、

こんなに生きる力に溢れる方がいるなんて知りませんでした。

 

人工呼吸器とは、呼吸を補助する機械のこと。

胃に潰瘍といって穴ができてしまうくらいストレスがかかるから、必ず胃薬を使わないといけない、くらいストレスがかかる、きついイメージのある機械。

 

つけている患者さんは、ぐったりしている人が多いイメージでした。

 

ましてそれをつけて、たくさんしゃべって映画にも行って恋愛もして

 

そんな人がいるなんて、

聞いたことも、みたこともなくって。

衝撃、を受けました

 

 

それから、ボランティア、介助の認識

  • 介助を受ける人はなんとなく弱い。
  • ボランティアは、意識の高い人がする、立派な行為。
  • 介助(おむつの交換、入浴、痰をとってもらったりなど)は、どうしても、恥ずかしさが漂う、受ける側も、する側も距離感がつかみにくい行為‥

 

そんな漠然としたイメージしかない、私でした。

 

 

でも、この本に書かれていたのは、それと全然違う姿でした。 

  • 介助をする側にもいろいろなことがあって、精神的に病んでいたりもする。
  • 介助を受ける側が絶対弱者である、なんてことはなく、指導する側にだってなれるし、主張だってガンガンする人だっている。
  • ボランティアは立派な行為と思ってやっている人だけじゃないし、出会ったきっかけは本当に様々。意識を高く持ってやっている人もいるけど、合う合わない、もあるし、理想的なことばっかり考えていたんじゃ、やっていけないところもある。
  • 介助は、もっと人と人とのぶつかり合い。介助する人によって笑いも生まれれば、涙もある。衝突だって茶飯事。そんな現場もある。

 

そんなリアルな介助のあり方を、知って、

とても、驚きました

 

 

人と絶えず関わらないと生きていけない、重度の障害を抱える人々。

 

プライバシーなんてないし、夜にぐっすり眠ることもできない生活。

 

そんな中で、どう生きるのか、

そんな人をどう支えていくべきなのか

 

考える、きっかけになりました。

 

この、濃密な本が、どう映画になるのか‥?

とっても楽しみです。

―――

ずっと、感想が書きたかった本です。

施設が襲われて、

障害のある方が、たくさん無差別に殺された事件、あったじゃないですか。

生きていてもしかたないって言われて‥。

 

ホント、この本をまず読んだ方がいいのではって思いました。

 

今の若い人、

障害者の方が起こした運動や、学生運動などいろいろあった時代のことを

あまり知らない世代の私たち。

 

一番読むべきかもしれない、ですね。

 

結構重量のある本なので、もう一度読み直すのにも骨が折れました‥!!

 忘れられない一冊です。

 

かなり詳しく書かれた本ですが、時代の背景、病気についての詳細も知ることができるので、是非よんでみてほしいです。

 

とりあえず、映画、見にいきましょう!

 

小山内さんの本も、読みたいな!って思いました。

車椅子からウィンク―脳性マヒのママがつづる愛と性

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それでは、今日も読んでいただき、ありがとうございました!