こんな夜更けにバナナかよ 感想 【筋ジストロフィー・鹿野靖明とボランティアたち レビュー】
誰にでも、探られたくない過去はある。
ましてや公表されたくない過去はもっとあるだろう。
しかし、最後にそのことにどうしても触れざるをえないと私が思うのは、そこに人間対人間の、本質的な問題が横たわっていると思えるからだ。
介助とは何なのか。
人が人を支えるとは何なのか。
この本は、来月、大泉洋さん主演で映画化される
“こんな夜更けにバナナかよ“の原作です。
2年にわたって取材を行い、
生命力に満ち溢れ、自己主張のとっても強い、
それなのに、どこか弱さもあって、
寅さんみたいに惚れやすいところもある、
“鹿野さん”の生きた記録、
そして、それを通して考えつづけた“介助”とは何かについて、
詳しくいろんな視点から、綴られています。
筋ジストロフィー(簡単に書くと、筋肉が徐々に溶け、歩けなくなり、最後は呼吸もできなくなってしまう、難病)を背負いながら
最後まで走りぬいた、“鹿野さん”と
“鹿野さん”を支えたボランティア、家族、恋人そして友人との
生々しい、リアルな人間模様(衝突、葛藤、恋愛模様まで。)
を覗き見ることができます。
この本は、いろんな意味で私の常識を覆しました。
私は、今まで人工呼吸器をつけている方で、
こんなに生きる力に溢れる方がいるなんて知りませんでした。
人工呼吸器とは、呼吸を補助する機械のこと。
胃に潰瘍といって穴ができてしまうくらいストレスがかかるから、必ず胃薬を使わないといけない、くらいストレスがかかる、きついイメージのある機械。
つけている患者さんは、ぐったりしている人が多いイメージでした。
ましてそれをつけて、たくさんしゃべって、映画にも行って、恋愛もして‥
そんな人がいるなんて、
聞いたことも、みたこともなくって。
衝撃、を受けました。
それから、ボランティア、介助の認識。
- 介助を受ける人はなんとなく弱い。
- ボランティアは、意識の高い人がする、立派な行為。
- 介助(おむつの交換、入浴、痰をとってもらったりなど)は、どうしても、恥ずかしさが漂う、受ける側も、する側も距離感がつかみにくい行為‥
そんな漠然としたイメージしかない、私でした。
でも、この本に書かれていたのは、それと全然違う姿でした。
- 介助をする側にもいろいろなことがあって、精神的に病んでいたりもする。
- 介助を受ける側が絶対弱者である、なんてことはなく、指導する側にだってなれるし、主張だってガンガンする人だっている。
- ボランティアは立派な行為と思ってやっている人だけじゃないし、出会ったきっかけは本当に様々。意識を高く持ってやっている人もいるけど、合う合わない、もあるし、理想的なことばっかり考えていたんじゃ、やっていけないところもある。
- 介助は、もっと人と人とのぶつかり合い。介助する人によって笑いも生まれれば、涙もある。衝突だって茶飯事。そんな現場もある。
そんなリアルな介助のあり方を、知って、
とても、驚きました。
人と絶えず関わらないと生きていけない、重度の障害を抱える人々。
プライバシーなんてないし、夜にぐっすり眠ることもできない生活。
そんな中で、どう生きるのか、
そんな人をどう支えていくべきなのか
考える、きっかけになりました。
この、濃密な本が、どう映画になるのか‥?
とっても楽しみです。
こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)
- 作者: 渡辺一史
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/07/10
- メディア: 文庫
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ずっと、感想が書きたかった本です。
施設が襲われて、
障害のある方が、たくさん無差別に殺された事件、あったじゃないですか。
生きていてもしかたないって言われて‥。
ホント、この本をまず読んだ方がいいのではって思いました。
今の若い人、
障害者の方が起こした運動や、学生運動などいろいろあった時代のことを
あまり知らない世代の私たち。
一番読むべきかもしれない、ですね。
結構重量のある本なので、もう一度読み直すのにも骨が折れました‥!!
忘れられない一冊です。
かなり詳しく書かれた本ですが、時代の背景、病気についての詳細も知ることができるので、是非よんでみてほしいです。
とりあえず、映画、見にいきましょう!
小山内さんの本も、読みたいな!って思いました。
それでは、今日も読んでいただき、ありがとうございました!