医学生と、本棚

医者4年目(後期研修医(専攻医))がゆるく書いてるブログ。(ゆったり更新中)

研修医とグラム染色。【抗菌薬の基礎】

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研修医の一コマを、軽いキモチでお楽しみいただきつつ、グラム染色、主要な菌たちから、抗菌薬の基礎まで頭の中をまとめていくのが、今回の記事の目標。

簡単に書いたので、細かい部分は‥あしからず。

それでは、当直している気分でお読みください。

 

 

夜の救急センター。パソコンの前に陣取り、カルテ書きに追われるあなた。

今日は3連休のど真ん中。したがって、大混雑。時刻はただいま、20時30分。

「先生〜!グラムさんの痰、とれました。流しのとこに置いときますよ。」

「ありがとうございます!!!」

看護師さんからのお呼びがかかった。

グラムさんは92歳男性。普段は車椅子生活、ご家族と一緒にお家に住んでおり、発熱、咳(痰もからんでいる)を主訴で来られた方だ。

さっき‥問診、身体診察はとっていて、肺炎を疑ったので、痰培養、尿培養、血液検査、尿検査、インフルチェック、胸部レントゲン、血液培養までオーダーを出して…痰を染めたいから、取れたら教えてくださいってお願いしてたんだったな‥!

 

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急いで流し台へと移動する。

流し台に雑然と置かれているのはグラムさんの痰が入った容器以外に、青、黄、赤と信号色の3つのボトル。それから、スライドガラスと水分を吸いとるための紙、そして痰を引き伸ばすための竹串、そして乾かすためのドライヤー。

プラスチックの手袋を装着し、細い竹串の両端を持ち、力を込めると小気味のいい音をたてて2つに折れる。痰の入った容器を開け、毛羽立った断面で痰をすくって、木を描くようにスライドガラスに塗りつける。

「うーん、かなりネバネバしてるし…P3痰(粘性の痰)でいいかな。」

痰が乾くまでドライヤーをあて、できあがったスライドガラスをピンセットで持ち上げ、流し台に置かれた金属の棒の上へのせる。

スライドガラスへ青、黄、赤の液の順で染み渡らせる。異なる液を垂らす前にはしっかり水で洗浄、最後にしっかり乾かすのも忘れないようにというのが大事…とかんがえつつ少しぼんやりとしつつ立ちながら休憩。

 

「‥これでよし。覗いてみよう。」

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顕微鏡に完成したスライドガラスをセットし、覗くと見えてくるのは無限に広がる‥細菌と細胞の楽園…。白血球、今日はなんだかたくさん見える。 

見えるのは、なんの菌だろか。

もやしもんの主人公みたく菌が見えて、オレは緑膿菌だぜ〜!とかしゃべって教えてくれたら楽なのだけど…。と考えながら、一滴スライドガラスにオイルをたらし倍率を上げて覗いてみる。

 

「うーん、なんかみたことあるけど。なんだったけ。」

色んな先生から教わったり調べたものをまとめたメモ書きをポッケから取り出す。

「先生、コバチライだね。」 

知らないうちに、今日当直で一緒の上級医の先生が顕微鏡を覗き込んでいて、顔の割にダンディーな声が耳元から聞こえる。

「えっと‥こ、こばち‥?」

「書いてあるじゃない、先生。これさ。」

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こばちらい‥!あった。 

「とりあえず、前の入院時の培養の結果も確認してみようか。確認して、抗菌薬選んでみてね。」

「わかりました‥!」

ごそごそと、こないだ先生が教えてくれた抗菌薬のメモ書きもポッケから取り出す。

セフェム系ペニシリン系というのは抗菌薬の名前です。

 

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急いで診察室へと戻り、電子カルテをカードキーで開く。レントゲン、血液検査、尿検査の評価をカチカチ音を響かせつつ書き込んで、グラム染色の結果も書き込んでいく。

 

”喀痰スメア(※痰の染色のこと)P3G5(痰の評価)GNCB+ 白血球貪食像あり”と。

「えーと、抗菌薬は‥。感受性の表もみて、前回入院の時の培養結果も参照すると‥〇〇がいいかな。うん、大丈夫だはず。先生に報告して看護師さんに点滴をお願いして‥入院依頼かけますか。あ、今日の病棟当直の先生怖い先生だった〜ちゃんとプレゼンできるかな‥汗」

上級医の先生の元へと小走りで向かいながら、一人ごとをつぶやいていると、いつのまにか22時をまわっていたのであった‥。

 

 

痰がらみの咳をした方の診療の流れは、おおまかにこんな感じです。

この時の抗菌薬はABPC/SBT(スルバシリン)を選択した記憶があります。

重症度や年齢、前回入院時の結果、身体所見、検査結果も加味すると治療薬は変わってくるのです。

読みやすかったでしょうか‥?

救急センターの裏側、普段何をしているのかが少しわかっていただけたなら、嬉しいです。

 

 

このページを読んでいる方にオススメの本&最近面白かった本たち&リンク集。

グラム染色

とてもみやすくて感動しました。実際のグラム染色で染めた菌、使うべき抗菌薬などがみれます。実際にどんな感じで見えるのか気になる人はぜひ。

gram-stain.com

絵でわかる感染症

もやしもんの漫画入り、抗菌薬の本。

楽しく読めてしまう一冊。菌~抗菌薬の歴史から、風邪に抗生剤がなぜだめかなどもわかる本です。実践的というより、どちらかというと雑学。この本を読んで、次に紹介する院内感染の本は知りました。(それもあるんですが、読んでいると、もやしもんをもう一度見たくなってアニメを最初からみなおしました)

絵でわかる感染症 with もやしもん (KS絵でわかるシリーズ)

絵でわかる感染症 with もやしもん (KS絵でわかるシリーズ)

 

 

院内感染

手を洗おう、漫然と抗菌薬を選ぶのをやめようと誓った一冊。昔の東大の研修医の働いてる姿も目にうかぶといいますか…。私も身に染みた一冊。いまだに無くならない耐性菌問題。医療スタッフ、医学生、患者さんともに読むべき本。

院内感染

院内感染

 

 

臨床ガイドライン

亀田総合病院さんのマニュアル。インターネット上で公開されているのです。グラム染色のことがわかりやすくまとまってます。カルテに書かれたP3G5…という暗号について、流れについてもわかります。他のマニュアルもわかりやすいです。研修医むけ。

臨床ガイドライン | 亀田総合病院

 

サンフォード感染症ガイド

感受性のページをよく使うのです。自分の病院は院内でその菌に対する抗菌薬の感受性の表があるので、それを確認してから抗菌薬を決定することが多いのですが、何時間ごとに投与とかモロモロ書いてあるので内科回っていた時は白衣のポッケに入ってました。研修医むけ。

日本語版 サンフォード感染症治療ガイド2019(第49版)

日本語版 サンフォード感染症治療ガイド2019(第49版)

  • 作者: 菊池賢,橋本正良,M.D. David N. Gilbert,M.D. Henry F.Chambers,M.D. George M. Eliopoulos,M.D. Michael S. Saag,M.D. Andrew T. Pavia
  • 出版社/メーカー: ライフサイエンス出版
  • 発売日: 2019/07/07
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 

Care NetTV

 感染症プラチナレクチャーで研修医の先生と一緒に、勉強しましょ。他の動画もあります。

carenetv.carenet.com

 

抗菌薬ドリル

言わずとしれたレジデントノート。色々読んでみたけど、さすが、一番実践的でした。研修医むけ!症例でまなぶのが一番早い気がします。

 

本当にあった医学論文

呼吸器内科のブロガーの先生が、毎日のように読んでいる医学論文の中で面白かったものを、まとめて書き記した一冊。コーラは骨をとかす?など誰もが一度は疑問に思ったものから、ハリー・ポッターの頭痛をまじめに考察した論文!?まで様々な論文を一挙紹介しております。いまだに医学論文アレルギーだけど、そろそろ抄読会の準備をしないといけない私にとって、コラムに書かれていた論文の検索の仕方はホントに勉強になりました。ブログにも論文の探し方が載っていてぜひ参考にしようと思いました‥!この本を読んで知った挿管シミュレーションゲーム!(スマホアプリ)遊んでみようとおもいます。続編も今度読もう。

 

pulmonary.exblog.jp

本当にあった医学論文

本当にあった医学論文

 


Airway Ex: Video Game for Anesthesiologists

play.google.com

 

 

 

お久しぶりです。

やっと書けました~笑。お絵描き、久しぶりにしました笑

アイビスペイントってすごいですね。楽しかった。

最近は…内科を回っていた時とはガラッと違う毎日を手術(オペ)室で過ごしている私です。内科と外科って、全然雰囲気も動き方も、何もかも違うのです。同じ医者なのに、何でこんなに違うのか、、。ふしぎ。体力がないので、毎日疲れてます笑

とりあえず、今回は自分が楽しめつつ頭の整理ができたので、満足😊!勉強したら更新していきます!

まだまだですが、日々頑張ろうって思います。今回の本たちは医学系に偏りましたが、、今読んでる本のは伊坂幸太郎ラッシュライフな私です笑 続きが気になる。

色々映画もみたい!(時間が欲しい。)なんだか働き方改革の余波は一応研修医まで到達するそうで休みが増える疑惑があるので、ちょっぴり期待です。。

それでは、今日も読んでいただきありがとうございました。

明日も、ぼちぼちがんばりましょ!