医学生と、本棚

医者4年目(後期研修医(専攻医))がゆるく書いてるブログ。(ゆったり更新中)

【研修医生活】進路が決まりました。

 

RS ウイルスの逆襲

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全面ガラス張りの高層タワー。
砂埃が舞い泥と火薬の匂いが充満する中、ぼろ雑巾のような服を着て、必死に生きる人々を見下ろす、タワーの中のセーフティーゾーンにいる住人たち。

ガラス越しに見えるのは、荒廃した世界。
致死率の高い新型のインフルエンザウイルスが蔓延し、外の世界では防護服無しに暮らせなくなった人々。お金のある人々は、我も我もとタワーの高層階に逃げこみ、歪んだ格差・階級社会を築きあげ、高価な衣服を身につけ下の階に住む人を見下し、優雅な自粛生活を営むのであった…

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もう2ヶ月ほど前に購入したこの猫本「猫の本100選」なのですが、その本に載っていた「ブルータワー」という本がかなり面白くて。書いた通りの世界観で、200年前の現代から来た余命数ヶ月の男が、そんな荒れ果てた世界を救う鍵になるっていうSFなんですけどね。(気になる人は読んでみてほしいです)

今の生活にかなりシンクロしているというか、良くも悪くも。テロ・格差・蔓延したウイルス…まんま現代社会ですよ。

猫本になぜこんな本が載っているかというと、主人公が持っている腕時計型人工知能が8頭身のイケメンで、ビシッとスーツを着こなした、顔だけアビシニアン(猫)だから、なのです。念じれば、天気も変えられちゃう、素敵な力の持つ次世代のスーパー猫型ロボット!スーパードラえもんかしら。
そんな本をちまちまと読みながら、研修先の病院の小児科病棟で私がこの間まで戦っていたのは、もう一つのウイルス、
そう、RS ウイルス。
コロナウイルスが蔓延する現代、こっそり流行っている奴ら。
保育園の先生や子育て世代のママ・パパなら馴染みのある、風邪のウイルス様。
例年であればこの時期には流行らないそうなのですが、私の住む地域はこのウイルスに覆い尽くされていました。もう、大変。
私たちなら風邪ひいたかな?で終わるウイルスですが、炎症によりできた痰が出しきれ
ず気道を塞ぐため身体の中の酸素は下がるし、状態が悪くなると挿管といって気管に管をいれて救急救命室(ICU)に行くまで悪化してしまうのです。やっぱり、人間って弱い。一人じゃ全くもって何もできない。こうして無事に生き延びているのってすごいことなんだなって、小児科を回って感じました。隣で寝転んでるネコさんなんて、風邪もひかないし、一瞬で立ってトイレも覚えて…やっぱり天才だな、と。

話ずれちゃいましたが、はやくコロナウイルスさん…終息していただきたい。年末年始の病院は、ホントに人が足らないのですよ。

ブルータワー (文春文庫)

ブルータワー (文春文庫)

  • 作者:石田 衣良
  • 発売日: 2011/06/10
  • メディア: 文庫
 

 


血の匂いと優しい記憶

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病院の白く冷たいタイルの床に滴る真っ赤な血。
その真ん中には、脇腹に開けられた隙間から手を入れられ、心臓を直接揉まれながら病院へ到着した男性。作業中に落ちてきた機材に体を挟まれ心肺停止状態だったとのこと。
開胸心マといって、胸を開けて心臓そのものをマッサージする処置を施されながら病院へ
到着した男性の回りには沢山のスタッフの先生と看護師さんとピロピロとアラームが鳴る精密機器でごった返している。

その隣のビニール張りの部屋には、さっき救急車で運ばれてきた、施設で熱が出たおばあちゃん。その傍らにガウンとマスクを装着し完全防御した研修医と看護師さんがいて、採血と点滴をとろうと四苦八苦している。

そしてビニールで区切られた外には、救急の先生が施設の職員さんから話を聞いている。

私は、バイク事故で頭と左腕と左脚を怪我したお兄さんの全部の傷を確認し、洗浄がようやく全部終わり、針と糸を準備しようと席を立ち上がった時、ドアの狭間から

 

その光景を、見た。

 

プルルル…。ピッチの音で目が覚める。

どうやら夢を見ていたみたい。

デスクに突っ伏して仮眠していた研修医の私。今は産婦人科を回っているので、お産を手伝ったり、子宮・卵巣癌などで摘出する人のオペに入ったりする毎日を過ごしている。

呼ばれて駆けつけた分娩室には足をひろげていきむ妊婦さん。部屋の中は、暑く、モワァッとした熱気に包まれている。足の間からは、赤ちゃんの頭が出ていて、産まれそう。

助産師さんがひっぱり出し、ぬるりと産まれてきた、赤ん坊。

ガウンを着た産婦人科の先生と看護師さんと小児科の先生に見守られながら産まれた、一つのいのち。

そして滴るのは、真っ赤な血。

 

命の源、真っ赤な血。

元気よく泣いている赤ちゃんは綺麗にされ、お母さんのもとへ。

 

真っ赤な血をみることは、これからはあまりなくなるけど、この記憶は心の中にしまっておこう。


救急には1次から 3 次救急まであります。私が研修している病院は 2 次救急で、超重症の患者さんは来ないので、1ヶ月間、近くの 3 次救急の病院へ研修に行った時の記憶と、産婦人科の記憶の断片を書いてみました。開胸心臓マッサージをみたのは、これが初めてで、印象に残ったので。コロナも蔓延していて超忙しかったのです。

産婦人科、救急はやっぱり毎日ドラマが繰り広げられているというか…研修医として回っているなかでたぶん一番、何十年も忘れずに覚えてる科かなって思います。産まれたり、なくなったり。患者さんにも色んな背景があるので、人によって色んな状況になるから、すこしずつ違うのですが。

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記憶の断片をエモい文章にして切り取った本。最近夜な夜な開いています。  

こういう、血に結びつけられた強烈な経験もあるけど、
夜勤で一緒だった看護師さんや技師さんと交わした会話の一片だったり。
忘れられない患者さんだったり。

平和なコロナ前、同期の家で集まってライブを見て、お酒を飲みながら話をした夜だったり。

なんか不思議と記憶に残っていることってあるじゃないですか。それをこう、いい感じに残せたら素敵ですよね。またこんど、そういうことは書けたらいいな。

すべて忘れてしまうから

すべて忘れてしまうから

  • 作者:燃え殻
  • 発売日: 2020/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

進路のこと


最近、専門医登録が終わり来年の進路がどうにか決まりました。

医師は二年間の初期研修が終わると、次は専門医研修に入ります。

私は色々考えた結果、病理の道へ進むことに決めました。病理はドクターのドクターと言われる、ちょっと特殊、だけど必要な領域の医師です。病院にいる病理の先生が毎日何をしているかというと、毎日生きた患者さんから内視鏡でみながら取り出されたポリープみたいな小さいものから、手術でとられた肝臓・肺・腸・胎盤などおおきいものまで…ナイフで割を入れて、写真をとって、スライドを作って、顕微鏡で見て診断してということをしております…というなんとまあ一般の人からするとよくわからないと思われちゃうお医者さんですが、一言でいうと患者さんの病変そのものを見るお医者さんです。決めた理由は一つじゃないのですが、大きかったのは、病院の色んな科を回って色んな病気に会ったけど、病気の元の元、病変そのものをしっかりこの目で見ることができるのって病理医だけなんですよね、それが良いなと思ってしまって。内科にいると、特に治療があんまり目に見えなくて、んーと思う瞬間が多かったんですよね。最終的な診断をすることになるので、かなり責任重大なのと、今後AIに先を越されちゃう可能性は無きにしもあらずですが笑 

飛び込んでみようと思います😆かげながら見守ってください!

 

偏屈で気難しい感じでなくって、素直で話しやすい先生になるのが目標です笑 

 

 

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お久しぶりすぎて、ご無沙汰もご無沙汰ですね。学生時代からはじめたこのブログ、久々にみたら本当なのか分かりませんが合計10万pvを超えていました。全然更新できていませんが、まだチラチラと読んでくれている方がいて、ありがたい限りです。感謝。

何をしていたかというとまあ、上の文章の通り色々あったのと、発表と抄読会という論文やら色々読んで準備しないといけないのが重なって、休める休日は完全にオフモードになっており全く書けませんでした笑 寝たり気晴らしばかりしていたため、本もあんまり読めず。ずっと何かしら書きたいとは思っていたのですが…笑 

全然1月に1回更新できてないですが、これからもちまちま、ちまちま。書いてみます!医師二年目がもうちょいで終わりそうで震えておりますが、これからも精進します!

そして、ここまで読んで下さった皆様。今回は血やらなにやらが多くて、疲れさせてしまったかと思い、癒し記事も用意しましたので。気分転換にどうでしょうか~

otnika301-703.hatenablog.com

いやあ、楽しかった。こんなお仕事をしておりますが、ふつうの女子なのです。ということがわかってもらえたらいいな、、癒されたい〜

 

それでは、ここまで読んでくださり、ありがとうございました!✨