最後の医者は桜を見上げて君を想う、を読んで。【死と向き合う、ということ】
この世界に、こんな場所があるだなんて知らなかった。
いや、もっと言おう。人が死ぬなんて知らなかった。
もちろん知識としては知っている。祖父母を看取ったこともある。
だが、普段目の当たりにしないから忘れてしまっていた。
人は死ぬ。苦しんで、一人ぼっちで死ぬ。そして死からは誰も逃れられない。
そんな当たり前のことを、浜山は病院でようやく実感していた。
あなたは、死ぬことについて、本気で考えたことがありますか。
この本には、
死を宣告された患者さん、
患者さんのご家族、
命あるかぎり、生かす、最後まで諦めない医師、
死を受け入れ、残りの日々を生きることを勧める医師、
が出てきます。
この本を読みながら、私は病院で見てきたことを、思い出しました。
詳しくは書けないけれど、
いろんな形の“死”を、この目で見てきました。
一番こころに残っているのは、
末期のがん患者さんの、夕日に照らされ静かに光っていた瞳。
夕方の回診で、
先生の後ろについて患者さんを訪ねて、一言二言交わした時、
家族に囲まれて微笑む患者さんの、
その瞳が、今まで見てきた中で、一番綺麗だったのを、今でも覚えています。
死を受け入れきれずに、家族ともうまくいかなくなってしまい、
どこか投げやりな人もいた中で、
その人の眼は、どうしてそんなにも綺麗だったのか。
死を受け入れること。
死を遠ざけようと必死になること。
自分で考えて、悩み、答えを出すことの、難しさ。
そこに向き合っていかなければならない、
医療従事者の苦悩、思い。
それがひしひしと伝わってくる一冊です。
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この本で、私、ひさしぶりに号泣しました。
大学合格したばかりの女子医大生の章があるのですが、そこが自分と重なってしまって、もう涙が止まりませんでした。
死ぬ、なんて考えられない年ですもん。やりたいこと、いっぱいありますもん。まして受かったばかりなのに。
私だったら、覚悟、決められないと思います‥。
最近では、病院でなく自宅で最期を迎えられる人や
抗がん剤や手術を希望せず、自宅で静かに最期を迎えたいという人が増えてきていると思います。
医療従事者や家族からしてみたら、生きているだけでいいから、
お願いだから、死なないでくれ。絶対死なせない!!
という思いで、延命措置をしようとするのもわかるのですが、
一番の当事者は患者さんなのですよね。
患者さん自身がどう考えているのか。
それを、時間をかけて、聞く。
最後まで戦い抜きたい人もいれば、安らかに最期を迎えたい人もいる。
それを、
理解する必要があると、改めて感じました。
また、医療を題材にした本って、たくさんあると思うのですが、
権力争いでドロドロしていたり、ミステリになってしまって現実とはかけ離れエンターテイメントになってしまっている作品も多い感じがします。
この本は丁度よいところをいっている 感じがしました。ありえない、ありえるの中間の、絶妙なライン。
医療関係者が読んでも、病院を全く知らない人が読んでも、共感できる作品なのではないかと思いました。ぜひ読んでみてほしいです!
今日は、二宮敦人さんの本でした。
二宮さんは最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常を読んで、知りました。(この本、かなり面白いです。)
この本もまた紹介できたら!と思います。
それでは、今日も読んでいただき、ありがとうございました。